本土地改良区の藤島川上流部は、東西ともに高台地(標高200~300m)に挟まれた南北に細長い帯状をなし、下川代付近になると
藤島川の侵蝕と推積によって出来た耕地、主として水田は約 700mの巾に達し、さらに市野山付近に下がるとかなり扇状地形的な地形となっている。
扇状地の大きさはあまり大きくなく、末端を羽黒町荒川、大川渡、楪とする5~6kmの割合細長い扇状地であり、
この下流は当地域の東側を流れる京田川を界として平坦なる耕地を形成している。
また、今野川上流部は急傾斜をなしており、流域全体が標高15m~230mの傾斜した耕地である。
本地域は、西よりの季節風が強く苗代期(4月)には時折月山颪(俗称ダシ)の強風に見舞われ、
8月、9月の結実期は南東の強風降雨を伴い10~20mに達し低温続きの場合もあるが全般的に支障はない。
積雪は1.5mにも及ぶ、羽黒、山間地帯を除いては平年積雪量50cm内外である。融雪期は上下流10~15日の差があり、
3月下旬よりの融雪期には雪代にて河川水が多くなる。
降雨及び融雪水によって6月下旬頃までは、かんがい水に不足を来すことはないが、6月上旬より8月下旬に亘り稲の開花期、
結実期は融雪量降雨少なく、水源である藤島川及び今野川、爪田川の水量減少に伴い地域へのかんがい用水の確保が困難となり、干天の時は甚大な被害を受けることがある。
本地域の水源は、源を標高1,984mの月山から発する藤島川より自然取入している13か所の派川と、
月山中腹黒森山(標高930.2m)から発する今野川とその支流の爪田川より自然取入している
14ヶ所の派川によって全地域にかんがいしている。
また、ため池10か所と13か所の揚水機及び地下水ポンプ8か所の補水施設を有している。
4月下旬の代掻期、5月の田植期には水量が豊富であって水不足を来たすことはないが、
8月上旬の稲作上最も重要な開花期及び結実期には用水不足となるため、
県営事業等により河川から取水する揚水機の設置やため池の築造及び改修、
地区内排水の反復利用揚水機等の新設事業を施し不足水の確保に努めてきたが、
完全確保には至らず、局部的補水として地下水利用による揚水施設を設置し、
干ばつ被害を最小限に防止するよう努めている現状である。
今日、“笹川”と称される河川は地図上に存在しない。“笹川”とは、以前、藤島川が笹に覆わ
れていたことから、昔から流域民は“笹川”、“笹川”と呼んでいたことに由来する俗称である。
従来から“笹”として流域民との関わりが深く続いてきたことから、土地改良区設立にあたり、
流域民の意向を尊重し俗称を名称とした珍しいケースである。
笹川の上流部は月山火山の火砕堆積地帯で深さ百数十メートルの谷地形を直線状に流れ下る急
峻な自然河川であることから、昔から“暴れ川”の異名をとって来た。春先の雪代水、梅雨期の豪
雨などによる洪水は下流部に甚大な被害を与えたかと思えば、夏期には渇水となり、流域の水田地
帯に大きな旱魃をまねいて来た。その年の降雨の多小によって、笹川の水は大きく左右され、流域
民を一喜一憂させて来た。